翌朝……。
執事「だっ……旦那様ーっ!!」
ズドドド……。
ティグ家の執事は、廊下を爆走している。
執事「だ・ん・な・さ・まぁーっ!!」
ティグ「ふああ……なんか騒がしいですねぇ」
ティグは超高級ベッドの上で目を覚ました。
ドドドド……。
ティグ「誰ですか、廊下を走っているのは?」
バキャッ!
ティグ「どひぇえっ!!」
ティグの部屋の扉を突き破って、執事が入ってきた。
ティグ「なっ……何事ですかっ!?」
執事「ぜぇ……ぜぇ……ガク」
ティグ「ああっ、執事A!」
執事Aは、心臓発作で死んでしまった。
執事B「たっ、大変ですっ、旦那様!」
そこへ、執事Bが駆け込んできた。
ティグ「何事です!?」
執事B「どっ、ドラゴンがっ!早くお逃げ下さい!」
ティグ「え……ど、ドラゴン?」
……まさか。
執事B「はいっ!上で人が操っております!」
ティグ「人……ねぇ。それってもしかして……ちっちゃい子供と、異様なエルフと、斧を持ったドワーフじゃあなかったですか?」
執事B「はあ……言われてみればそうだったような気も……」
ティグ「……ちょっと見てきます。執事Aを弔っておいて下さいね」
執事B「……ああっ!執事Aさんっ!しっかりっ!」
ティグ「ふっ……やはり……」
ティグ宅の上空では、エキュ君がバッサバッサと飛んでいた。
ティグ「……テレポート」
ビュンッ!
次の瞬間、ティグはエキュ君の上にいた。
ティグ「これ、こんなところで何をしてるんです」
フィップ「げげっ!ティグさん、なんでここに!?」
そりゃ、いきなりワイバーンの上に人が現れたら、誰だってビビるわな。
ティグ「まったく、もうそろそろ着いているかと思えば……」
フィップ「だってだって!いくら山沿いに見ても、言われたような神殿がないんだもん」
ティグ「え……」
ティグの顔が引きつった。
ティグ「もしかしてあなたたち、横から探してたんですか?」
フィップ「うん」
ティグが頭を抱え込んだ。
ティグ「それで……どうせ、山は越えてないんでしょうね?」
フィップ「そうだけど……どうして?」
ティグ「神殿があるのは、反対側の斜面なんですよ」
フィップ「……どえぇっ!?」
驚くフィップと、落ち込むティグ。
フィップ「そんなこと、一言も言わなかったじゃない!」
ティグ「言わなくたって、普通は反対側かな、と思うでしょうが!」
フィップ「思わなかったもんっ!」
ティグ「う……」
言い返せなくなったティグ。
ヴァトルダー「で……結局こうなるわけですね……」
エキュ君は、ヴァトルダー&お仲間+ソロー+リーハ+アルストレイトの合計8人を乗せて、死にそうな思いで飛んでいた。
ヴァトルダー「まったく……エキュ君が本来の速度で飛ぶには、せいぜい4人まで乗せるのが限度なのに……」
ローゼン「ま、いいんじゃないか?別に急ぐわけでもないし」
楽観主義者・ローゼン。
アルストレイト「なにを言うか。一分一秒でも惜しいというのに」
ローゼン「そりゃあ、あなたやフィップ達は調査するっていう目的がありますからねぇ。でも、俺やヴァトルダーは単なる護衛。リーハさんに至っては、半分観光旅行みたいなもんですから」
ソロー「そうそう、おじ様もお寛ぎになって、ね☆」
リーハ「ソローちゃん、そういう風に中年の方からかってはいけませんよ」
ソロー「はーい」
ペロッと舌を出す。……とても子供と大人の会話とは思えないなぁ……。
ヴァトルダー「しかし、どうも気になる」
ローゼン「何が?」
ヴァトルダー「リーハさん」
な、何!?
ヴァトルダー「より正確にいうと、リーハさんの過去だな。そもそも、リーハさんっていくつ?」
リーハ「し、失礼ですわよ、女性に年を尋ねるなんて」
ヴァトルダー「俺の推測では、リーハさんは20代ギリギリだな」
リーハ「な……何を根拠に!?」
ヴァトルダー「だって……リーハさん、一応支部長でしょ?それに、結構すごい神聖魔法、使えるじゃない。だから」
リーハ「し、支部長は、実力があればなれますわよ。神聖魔法の件だって、ローゼン君もかなりの力があるじゃないですか。ローゼン君は、確か……」
ローゼン「18だ」
リーハ「そ、そう、まだ18歳なんですよ。だったら、私だって……」
ヴァトルダー「25、とか?」
リーハ「ピンポーン!……って、違いますよぉ!ぜーったい、違いますっ!」
必死に否定するリーハ。
フィップ「へえ、あのリーハさんがコソコソ……」
ダッシュ「思っとったよりもコソコソ……」
ローゼン「やっぱり、人は見かけにコソコソ……」
リーハ「えーい、おやめっ!!」
……しーん。
リーハ「と、とにかく、この件に関しましては、私はノーコメントですっ!」
皆さん「……はい」
アルストレイト「あれだ!あそこがそうだ!ワイバーンを、あの遺跡の離れに下ろしてくれい!」
フィップ「それえ!」
バッサバッサ……どしゅうぅぅ……。
フィップ「着陸完了!」
ローゼン「やっと着いたな」
ヴァトルダー「おうっ!……しかし、なんだ?この遺跡は」
アルストレイト「どうだ、見事なもんだろう」
ヴァトルダー「……どこが?」
一行の前に広がっているのは、土に埋もれて、ごく一部だけが地上に突き出ている柱ぐらいのもんである。
ヴァトルダー「これ……なあ。俺が今までに見てきたのと、全然違うぜ。この前も観光がてらに行ってきたけどさ、普通は看板があって……」
アルストレイト「たわけが!」
ヴァトルダー「俺が?」
アルストレイト「勿論だ」
ヴァトルダーは頭を抱え込んで、ショックを堪えている。あっさりと言い放たれたのがよほど効いたらしい。
アルストレイト「遺跡に、もともと看板などが立っておるわけなかろう。だいたい、もとからそんなものが立っておったら、それも遺跡の一部と化しておるわい」
ローゼン「子供でもわかりますよね、アルストレイトさん」
ソロー「うん、あたしでもわかるよ」
ヴァトルダー「うおーっ!」
我が子に負けたヴァトルダーは吠えている。
アルストレイト「この際だから言っとくがな、遺跡というのは宝がある場所のことではないのだぞ!極端な話、何百年か前のトイレだって、立派な遺跡だ」
ローゼン「確かに、トイレに財宝はありませんわな」
アルストレイト「あったらとうに、学院に報告しとるわい」
ローゼン「それもそうですね」
アルストレイト「ともかくそういうことだ。わかったら、さっさと発掘を手伝わんか。遺跡の探索だの、護衛がどうのだのといった話はそのあとだ」
ヴァトルダー「ううっ……ボロクソに言われた挙げ句、何が悲しゅうて穴掘りなんぞを……」
アルストレイト「たわけっ!遺跡の発掘をなんと心得るかっ!!そもそも遺跡とは……」
このあと、ヴァトルダーはアルストレイトに遺跡論を聞かされ、さんざん詰られ、貶された。
その日の夜。
ヴァトルダー「ぐおおおおーっ!!」
ピキピキッ。
ヴァトルダーは、日頃の運動不足が祟って筋肉痛、更に加えて炎天下での長時間労働による脱水症状に苦しんでいた。
フィップ「大丈夫?二人とも」
ダッシュ「まったく脆いのぉ」
アルストレイト「まったくだ。この程度で根を上げるとは……」
ローゼン「馬鹿者め。プレートメイルを着たままで炎天下に晒されて、なおかつ体を動かせば、筋肉に強烈な負担がかかることや脱水症状にかかることは明白だろうが。それぐらい、子供でもわかることだ」
ソロー「うん、あたしにもわかるよ」
ヴァトルダー「くうぅぅぅ……」
ヴァトルダーは慟哭していた。
ローゼン「さて。それじゃあ皆さん、むこうで食事にしますか。今夜はパーッとやりましょ、パーッとね!」
ヴァトルダー以外「おーっ!!」
パチパチパチ、ドンドンドンドン。
ヴァトルダー「あ、あのぉ……俺は?」
リーハ「ヴァトルダーさん、耐えて。これも神がお与えになった試練なんですから。では……」
ヴァトルダー「……っ、そんなぁ……。どこの神だ、俺にこんな試練を与えやがったのはっ!出てこーい!!」
ヴァトルダーは、誰もいなくなったテントの中で、一人叫んでいた……。
それから三日後の午後。
ヴァトルダー「うおりゃあっ!」
ざくっ。
ヴァトルダー「ふぬっ!」
ざくっ。
ヴァトルダー「……虚しい」
ひゅうぅぅ……。
アルストレイト「どうだ、何か出たか?」
ヴァトルダー「いいや、駄目だ。掘れども掘れども、あったのは階段だけだ」
アルストレイト「……何ぃ!?」
ヴァトルダー「な……なんだよ、おい」
アルストレイト「このたわけがっ!」
すぱかぁんっ!
ヴァトルダー「痛ぇっ!」
アルストレイト「もっと早くいわんか、この馬鹿たれっ!で、その階段とやらはどこだ?」
ヴァトルダー「そこだ」
アルストレイト「……おおっ!こんなに掘れているのか!」
その階段は、下の方までずっと続いていた。
ヴァトルダー「いやぁ、それがな、その上にあった柱をどかしたら、それが出てきたってわけで、別に俺が掘った訳じゃあないんだ」
アルストレイト「そういうことか。にしても……素晴らしい。これなら、地下にも入って行けそうだな」
ヴァトルダー「……ふっ。やっと俺の本来の力が出せるってわけだ。久しぶりだぜ、まったく!」
アルストレイト「その様子だと、本当に自信があるようだな」
ヴァトルダー「あたり前だ!なんたって、オランじゃあ俺にかなう奴なんかいないぐらいだからな」
嘘つき。
アルストレイト「そこまで豪語するからには、それなりの働きはしてもらうぞ」
ヴァトルダー「任せておけ!」
ヴァトルダー「ようし、それじゃあ行くぞ!」
ローゼン「はいはい」
3日ぶりに完全武装した二人。
ヴァトルダー「ようし、GO!」
皆さん「おうっ!!」
ヴァトルダー達は、地下へ下りていった……。
ヴァトルダー「フィップぅ、まだかぁ?」
フィップ「もーちょっと待って。ここがこうだから……ここで……こうなって……」
フィップは、入っていきなりあった扉の鍵を開けるのに四苦八苦していた。
フィップ「う……うう……むかっ!」
がちゃっ!
なかなか開かないので頭にきたフィップは、一思いに鍵穴に突っ込んだ針金を回した。
ちゅどーん!!
……扉は大爆発した。
ぴくぴく……。
爆心地にいたフィップは、完全に気絶していた。
ヴァトルダー「ぐううう……お……お前ら……」
ぷすぷすと、ヴァトルダーの体から煙が上がっている。
ローゼン「ふう……」
ダッシュ「お陰でわしらは助かったぞ、ヴァトルダー!お前の尊い犠牲は無駄にはせんっ!」
要するに、こいつらはみんなしてヴァトルダーを盾にしたということか。
リーハ「ほんと、助かりましたわ☆ありがとう、ヴァトルダーさん」
ヴァトルダー「いえ……お役にたてて光栄に存じますです……」
悲しい!悲しすぎるぞ、ヴァトルダー!
アルストレイト「皆の者……偉大なる故・フィップ殿に敬礼!」
るーるーるー……。死んでないのに……しかも敬礼とくるか……?
フィップ「ああ、びっくりした」
フィップはローゼンのキュアー・ウーンズで回復した。
ローゼン「俺の力を見損なってくれるな、フィップ。その気になれば、ホーント(=ゴースト、スペクター・ファントム)でさえも消滅させることができるんだぞ」
自慢をするな。
リーハ「あら、私にもできますわよ、それぐらいのことでしたら」
ローゼン「・……」
唯一の自慢の種が他人にもできると言われ、さらに「そのぐらいのこと」とまで言われたローゼン。
リーハ「そんなどうでもいいことはおいておきましょ」
ローゼン「ど……どうでもいいこと……?」
さらにグサッとくるローゼン。
フィップ「僕の命を張った行動で、扉はなくなっちゃったからね。早くいこ」
ダッシュ「うむ」
アルストレイト「始めからこんな調子では、先が思いやられるな……」
ローゼン「まあまあ、たまにはこんなこともありますよ」
アルストレイト「そうか?」
ローゼン「そうです」
アルストレイト「……ま、いいだろう。行くぞ」
すたすたすたすた……。
ヴァトルダー「あの……俺の傷も治して……痛いんだけど……すごく……」
奥に進んでいくと、前方と左右の計三方向に道がわかれた。
ヴァトルダー「ようし、前進だ」
テクテク……ピタッ。
ローゼン「行き止まりじゃねぇかっ!」
ばこっ。
さっきの仕返しに、ローゼンがヴァトルダーを殴った。
ヴァトルダー「んなこと、俺に言われたって知らんっ!」
リーハ「まぁまぁ、ローゼンさん。ヴァトルダーさんなんですから、道を間違えたってしょうがないじゃないですか」
ローゼン「……まぁ、そりゃそうですけど……」
一同も頷きながら道を引き返していく。一人、ヴァトルダーの胸中に寒風吹き荒ぶ今日この頃であった。
一行は、次に左へ進んだ。
てくてく……。
途中で道は右へ曲がっており、さらに進むと、今度は前と右の二方にわかれていた。
ヴァトルダー「よし、右だ」
アルストレイト「はい、前ですね」
ヴァトルダーを無視し、前へ進む一行。
ヴァトルダー「お、お前ら……」
道幅はだんだん広がり、やがて一つの部屋へ出た。
アルストレイト「では、私はここで待ってますから、調べてきて下さいね」
フィップ「うん。ライト」
ポォッ……とダガーの先に光が灯る。
そのまま一行はアルストレイトを残して前へ進んだ。
ヴァトルダー「ん?あれは……」
ダッシュ「椅子……の上に、誰かがいるな」
一行の前にある椅子の上には、半透明の男が座っていた。外見年齢は50過ぎといったところである。
ダルス「……あれはスペクターぢゃ」
フィップ「スペクターってアンデッドだよね」
ダルス「うむっ」
フィップがダルスに話しかけていると、スペクターが低い声で語りかけてきた。
スペクター「おとなしく去れ。そうすれば危害は加えん」
そう一方的に言い放つと、スペクターは後ろの壁に吸い込まれるように消えた。
フィップ「……」
こそこそこそっ。
フィップは右の壁を調べた。
フィップ「あ、絵がかかっている」
そういって、壁にかかった、額に入った絵を手に取る。
スペクター「おとなしくそれを放せ……」
突然、壁からスペクターの顔がヌッと現れた。
フィップ「わぁっ!……び、びっくりしたぁ。……これ、あんたのだっていう証拠は?」
スペクター「証拠は、額の後ろにある」
フィップ「どれ……」
額の裏には、「ベイル」と書いてある。
フィップ「ベイル……これ、あんたの名前?」
スペクターが無言で頷いた。
フィップ「……じゃ、中身を取って……と」
ごそごそと中の絵を取り出す。
フィップ「はい、あんたの額は返しとくからね」
スペクターは顔をヒクつかせ、また消えた。
フィップ「今度は反対側……と」
足取り軽く、反対側の壁へ向かうフィップ。
フィップ「ふんふん……」
ぴたっ。
反対側の壁の前では、スペクターが腕を組んで宙に浮いていた。
フィップ「……やっぱ、やめたっと」
フィップは進行方向を変え、ヴァトルダーたちの方へ戻った。
ヴァトルダー「おう、フィップ。どうだった?」
フィップ「戦果はこの絵だけだよ」
と二人が話していると、またスペクターが椅子の方へ来た。
スペクター「いいな。この場所から去れ」
そしてまたスッと消えた。
フィップ「……椅子はどうかな?」
一行が椅子に近づこうとすると、スペクターが壁から首だけ出して言った。
スペクター「いいか、椅子には何もない。早々に立ち去れ」
スッ。
あからさまに怪しい。
フィップ「……一応、調べようかな」
こそこそ。
フィップ「うーん、何もないなぁ」
ダッシュ「どれ、わしが壊してやるわい」
ヴァトルダー「おいおい、いいのか?」
ダッシュ「問題なぁしっ!!」
ばきぃっ!
ダッシュのグレートアックスで、椅子は粉々に砕かれた。
フィップ「あっ、いいもの見っけっ!」
フィップが椅子の破片の中から、鍵らしきものを見つけた。
スペクター「みぃーたぁーなぁー」
いきなり出現すると、恨めしそうな声でスペクターは睨み付けてきた。
スペクター「さあ、素直にそれを返せ……。そうすれば……」
にたっ。
フィップ「やーだよーだ」
しゅたたっ!
フィップは、あっと言う間に出口の方へ走っていった。
スペクター「うぬぅ……貴様ら、皆殺しにしてくれるっ!」
スペクターが切れた。
スペクター「ポイズン!」
手始めに、一番近くにいたダッシュが狙われた。
ダッシュ「ふんふーん☆そんなもん、効かんわっ!」
平然と言い放つダッシュ。
ヴァトルダー「よし、ダルス、奴の弱点を教えろ!」
ダルス「うーむ……物理的な攻撃は効かんし……」
ヴァトルダー「な、なにぃ!?それじゃあ、俺は……」
ダルス「ただの役立たず、ぢゃ」
ヴァトルダー「ガーン……」
ヴァトルダーは、ただただオロオロしている。
スペクター「お前たち、今すぐ返せ。そうすれば、命は助けてやろう」
スペクターが、ごくわずかに残った理性で言った。
フィップ「やーだよー」
その一言で、スペクターの理性が完全に消し飛んだ。
スペクター「……アシッド・クラウドっ!」
あたりの空気が猛酸性に変わる。効果圏内にいるのは、ローゼン、ダルス、ヴァトルダー、ソローである。
ローゼン「ぐぅっ!」
ダルス「むっ!」
ローゼンとダルスは、抵抗に成功し、ローゼンは少々苦しんだが無事に生き残り、ダル
スも気絶はしたものの死には至らなかった。しかし……。
ヴァトルダー「がぁっ!!」
ソロー「きゃあっ!」
ヴァトルダーとソローは、抵抗に失敗。二人とも苦しみ回って、そのまま敢え無く昇天である。ふっ……遂にやってしまった。
リーハ「ああっ、ソローちゃんっ!!」
現在、意識があるのはフィップとローゼンとダッシュ、それにリーハ、あとついでにアルストレイトである。
ローゼン「くっそぉ……ターン・アンデッド、10倍!!」
(註……このプレイは、旧版当時に行われている)
しかし……スペクターには効かなかった。
ダッシュ「ぬぅ……ならば……ターン・アンデッド、20倍!!」
勿論、魔晶石を使っている。
スペクター「うっ!!」
スペクターは恐怖に凍りつく。まったく、20倍で効かなかったら、パーティ全滅は間違いなしだった。
ダッシュ「さあ、今のうちにいくぞ!」
ローゼン「おう!」
ローゼンとダッシュは急いでヴァトルダーとソローを毛布でくるみ、その場所をあとにした。
アルストレイト「どうしたんです?あーっ、さては死んじゃいましたね、二人も!」
リーハ「それどころじゃありませんっ!」
ローゼン「早くこの場所から逃げるぞ!スペクターが復活して追いかけてくるかもしれない!」
アルストレイト「わかりました!……それにしても、一緒に行かなくてよかったぁ……」
こいつ、ローゼンみたいな根性をしているな……。
とにかく一行はヴァトルダーとソローの死体を抱え、急いでオランへ引き返した。
ローゼン「ティグさーんっ!!」
場所はティグ宅前である。
執事「おや……ローゼン様。旦那様に御用でございますか?」
ローゼン「そう、御用でございますっ!早く、早く呼んでっ!」
執事「畏まりました。少々お待ちを……」
ローゼン「うーっ、待てない!」
……しばらくのち。
ティグ「やー、皆さん、お待たせしました。何か御用ですか?」
ローゼン「あ、ティグさん!金ちょーだい!今すぐ!」
ティグ「お金……って、幾らです?1万ガメルほどですか?」
ローゼン「いや、できれば16万2千ガメル」
ティグ「じゅ、16万……ってねぇ、そんなあっさりと……」
リーハ「ソローちゃんとヴァトルダーさんが、命を落とされたんです」
「ソロー」の部分をことさらに強調するリーハ。
ティグ「おや……それはそれは……。
……わかりました。じゃ、ソローちゃんの分は出してあげましょう」
そう言うと部屋の中へ入り、やがて一袋の宝石を持ってきた。
ティグ「はい、ここに9万ガメルあります。あとは自分たちで出して下さいね」
一同の間に驚愕と歓声が上がる。
ローゼン「さっすが、ティグさん太っ腹っ!」
ティグ「さ、早く。少しでも早いほうがいいですよ」
ローゼン「おっとそうだった。じゃ、どうもありがとう、ティグさん」
ティグ「あー、それからローゼン君」
ローゼン「はい?」
ティグ「生き返らせるなら、チャ・ザ神殿ですよ」
チャ・ザ神殿。
チャ・ザ司祭「はい、どのような御用でしょうか」
現在実質的主役のローゼン「ティグさんの紹介で来た。この男と娘を生き返らせてほしい」
司祭「ほほう……それは高くつきますよ。えーと、二人で16万2千ガメルになりますが」
ローゼン「ほれ」
どさっと机の上に袋が置かれた。
司祭「ほうほう……これはこれは……」
しゃしゃしゃしゃしゃっ!
やり慣れた手つきで、宝石と金貨の金額を計算する。
司祭「14万……15万……16万……と2千……はい、確かに」
ちなみに内訳は、ティグ9万、ダッシュ4万、3万2千がヴァトルダー(の遺品)である。
フィップ「もし失敗したら、責任とって他の司祭を呼んでよ」
司祭「大丈夫ですって。出すもんさえ出してもらえば、あとはお任せあれ」
さすが商売の神の信者だけのことはある。
司祭「では、向こうで処置を行います……立ち会われる方は、どうぞこちらへ」
隣室で、高司祭の手によりヴァトルダーとソローの蘇生が試みられる。
そして……
ヴァトルダー・ソロー親子は、いともあっさりと生命を取り戻したのだった。
司祭「それでは、こちらで責任を持って預かっておりますので、1週間後にお引き取りをお願いします」
念のため。リザレクションをかけてから1週間はしないと、元通りの行動は取れない。
ローゼン「わかりました。では一週間、特にこの男がご面倒をかけるかと思いますが、よろしくお願いします」