2014/03/20にリクルートメディアテクノロジーラボで開催された「WebRTC」が作るコミュニケーションの未来のメモです。主催はNTTコミュニケーションズさん。
前半が各登壇者の方によるプレゼン、後半が登壇者の方によるディスカッションでした。
前半がこのページ、後半はhttps://kisato.net/wp/html5/com-webrc_2です。
NTTコミュニケーションズ・小松健作さんの挨拶
WebRTCはブラウザ間で直接データをやり取りする規格で、いわゆるP2P。
現状のWebでは、サーバがあり、クライアントはそこを介してメッセージをやり取りするのが一般的。TwitterやFacebook等。
WebRTCでは、ブラウザ同士で直接電話会議等ができる。
簡単なデモ。開発中のビデオチャット。
一番シンプルなビデオチャットは「一対一のビデオチャット」だが、今作っているサンプルは複数人でのビデオチャットで、アバターを使ったりスタンプの機能も入れている。
URLへアクセスすれば気軽に使える、というのがWebの良いところ。
Cuve Slime(https://cubeslam.com/)。
相手の映像を見ながらゲームをプレイできる。
WebRTCを使ったプロダクトも既にある。Chromecast。
ChromecastとApple TVは似たような製品で、手元のスマートフォン等の画面をドングルを通じてテレビに映すことができる。
Chromecastではドングルがスマートフォンと繋がるところにWebRTCが使われている。
Skyway(http://skyway.io/)。
先ほど見せたようなWebサービスを簡単に作れるフレームワーク。今なら無料で使うことができる。
WebRTCによって、「サーバでの集中管理」から「端末間でのやり取り」という世界が生まれる。
冒頭2つのデモは人と人を繋げるものだったが、Chromecastは人とモノを繋げるサービス。あるいは、モノとモノを繋げるサービスも考えられるかもしれない。
nanapi・古川健介さん(けんすうさん)のプレゼン
nanapi(http://nanapi.jp/)はハウツーサイト。Wikipediaのハウツー版を作りたい、ということで始めた。
もう一つ、アンサーというサービス(iPhoneアプリ:https://itunes.apple.com/jp/app/nei-xude-xiang-tan!-wu-liaochattode/id736545034?mt=8)。
ずっとコミュニティサービスを作り続けてきた。
6つのキーワード。
(2014/03/24 抜けていたEmotionalを追記しました。がねこさん、どうもありがとうございます!)
Nonverbal。
多言語の時代から非言語の時代へ。
インターネットの黎明期は英語の世界だったが、今は非言語の方へ。
具体的には、レシピのサイトのトップは写真だけ、ファッションのサイトも写真。
あるいははっぱ隊(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%AF%E3%81%A3%E3%81%B1%E9%9A%8A)。これはYoutube等を通じて日本以外で受けた。
昔は言語で分かれていたのが、今は非言語、趣味趣向でコミュニティが分かれている。
Global Tribe。
Emotional。
今はロジックより感情に来るものが来ている。エモーションのアイコンやラインのスタンプなど。
Grooming。
パケット型とグルーミング型。
仕事のやり取りはパケット型だが、グルーミング型は内容より繋がっている感が重要。
Nowism。
Snapchat(http://www.snapchat.com/)やツイキャス(http://twitcasting.tv/)はリアルタイムで配信してその場で終わり。
ストックされたりフローが残るものと違い、「今」というものが来ている。
Anonymous。
日本だでは昔からそうだったが、海外でも匿名が来ている。
Facebook等は年配の人が多いが、若者はLINEでやり取りしている。
Webのコミュニケーションはこのように変化してきているが、その中でWebRTCはどうか。
考えた結果、No war、戦争をなくしたい、というところに辿り着いた。
マジメな例で、紛争国同士のチャットコミュニティ。
イスラエルのデザイナーが「イランの人が好きだ」というようなポスターを上げたら自国から賛同が上がり、相手のイラン側からも上がって、これが市民運動に影響を与えたりする。
そういうようなことをWebRTCでできないかと考えている。
例えばサイトを用意しておいて、そこにアクセスすると紛争国の人同士が繋がるような。
愛を伝えるためのツール。
サーバに繋がるのはログが残る。直接繋がって、切ってしまえばログが残らないとかすれば。今いる人だけが見える。
名前やプロフィールはどうでもよくて、安心する気持ちや愛する気持ちが伝わればいいと思う。
ゴチート・伊藤弘和さんのプレゼン
オン・ザ・エッジに新卒で入った後に株式会社イトクロを立ち上げて、その後ゴチート株式会社を立ち上げた。
また、スタートアップ企業への技術支援などを行っている。
LINEのPC版には、IDとパスワードで入る他にQRコードでログインする機能がある。PC版でQRコードを表示してスマホで映すとログインできる機能。
これをWebRTCでできないか。
(LINEの補足)
以下の手順で、PC版LINEアプリにログインすることができる。
・PC版LINEアプリのログイン画面で「QRコードログイン」タブを開いてQRコードを表示する。
・スマホ版LINEアプリで「その他」タブ→「友だち追加」ボタン→「QRコード」タブを選択する。
・スマホでPC側のQRコードを撮影し、「ログイン」ボタンを押す。
・(これでPC側もログインが完了する)
いまWebRTCを使える端末はAndroidで、機種が限定される。
しかし、メールを飛ばして画面を表示して認証させるというような二要素の認証には非常に相性がいい。
どんな機器と繋いだら便利か。
対象になりそうな機器として考えられるのは。PCのブラウザ、スマホのブラウザ、スマホのアプリ、電話回線。あるいは家電など。
一方、WebRTCで良く出てくる「カメラ」を外して考えると、電話回線が出てくる。
WebRTCは、PCブラウザではIEとSafariで使えない。
スマホはAndroidのChromeでしか動かない。(補足:現行のAndroid版Firefoxは動く)
PCブラウザと「スマホのアプリ」との組み合わせはありそう。
PCブラウザと家電の組み合わせについては土地勘がないのでわからないが、ないものを作るという考え方でいくならありそう。
今あるもの=ChromeとFirefoxだけでなく、他と積極的に繋いでいかないとビジネスにならないのではないかと思う。
実施にロケハンしてみた。
Androidエミュレータと(PCの)ChromeブラウザをSkywayを使って通信し、アプリ側の画面のアクティビティをPCブラウザ側に表示。
更にカメラで撮影している映像を画面キャプチャの横に表示する。
意外と簡単に実装できたが、このアプリはAndroid4.4でしか動かない。
ハードルを埋めるにはネイティブの(WebRTC用の)ライブラリを作ると言うところに落ちるが、現状はない。
しかしGoogleがやっているjingleというライブラリ群(libjingle? http://code.google.com/p/libjingle/)にはChromecastやHangoutで使っているコードが入っていて、これを見るとpeer.jsで繋ぐのも難しくないかなと思えてくる。
WebRTCをどのようなサービスに使うか。
スマホのアプリを共有しながらコンシュルジュ的に使い方やサポート。
同じ画面を見て同じ時間を使う。
こういうのをASPで展開するのも面白いのでは。
Cerevo・岩佐琢磨さんのプレゼン
CerevoはWebの会社でなく、IoT関係。ハードウェアや、それと連携するアプリをセットで作っている。
チームの半分ぐらいはアプリとWebを作っている。
世界のいろいろな国で商品を売っている。
WebRTCはCELEVOの商品と近い。WebRTCの通信はSTUNを使ったNATトラバーサルだが、Cerevoの商品も同様。他のネットワークの機器へアクセスするようなところ。
この(スライドで見せている)機器では、サーバリレーモデルで機器のコントロールを行っている。
別の商品として電源タップのOTTO(http://otto.cerevo.com/ja/)。
このタップは蓋の中に8個のタップが内包されていて、さらに宅外のiPadやiPhoneからリモートで各ポートのON/OFFや照明の明るさを変えたりすることができる。非常に小さなパケットのやり取りなので、自前のサーバでNATトラバーサルでやっている。AWSの小さいインスタンスで何百万台も繋げられる。
商品を企画するとき、みんながみんなほしい商品を作る必要はなくて、マイナーでいい。
Cerevoは売上げの半分が海外で、ドミニカやクロアチア等でも売れている。
家電屋さんの観点で、例えばIPカメラの映像等を見たいとき、NATトラバーサルしてくれるサーバがあればよいが、これは維持費がかかるので月額課金するとする。もし課金がある商品とない商品があれば、課金がない方が売れる。継続的にお金が入るモデルでないとNATトラバーサルは辛い。
遠隔地のdrone(http://ardrone2.parrot.com/)を見れるのも面白いが、UPnPでいいんじゃないのという話になる。
正確な統計資料はないが、STUNでは10%ぐらいのNATは抜けられない。
サービスを考える話。
一対多の接続が山のように組み合わさるパターン。
ビデオチャットや対戦ゲーム。
自分とやりたい人がこっちにもそっちにもいて、という場合で、かつ両方でNATトラバーサルが必要な時にWebRTCは有効。
組み込み機器での利用はtoo much。より軽いプロトコルで実装した方がいい。
あるいは電話しながらリアルタイムファイル転送サービス。
お互いに同じURLを打ち込むとドラッグ&ドロップができるようになっていて、サーバモデルじゃないのでクライアント同士で飛ぶ。
上に6桁とか8桁の番号を入れる欄があって、名前と番号を電話で話しながら入れると受け側は相手の名前が見えて、許可と押すとファイルがDLできる。
シークレットなファイルでもブラウザなタブを閉じてしまえばそれで終わり、アクセスできなくなるので意外と向いているのでは。
写真であればD&Dでリモートデスクトップ的に見せるとか、お互いのカーソルが見えて書き込みもできてとか。
Office(MSの)でもいいが、さしあたりPDFや画像に対応するぐらいであればすぐ実装できるのでは。
Snapchatのような刹那的なものもできる。
ピコもん・大前創希さんのプレゼン
学業の観点でWebRTCを使ったアイデア3つ。
1つ目。同期/非同期の講義。
オフラインの講義はリッチ。身振り・手振りもあってとか、笑い声があったりとか。
オンラインの講義もだいぶ行われるようになっている。例えばSchoo(http://schoo.jp/)など。24時間見えるようになっていたり。
1人対n人のツール。
Adobe Connect(http://www.adobe.com/jp/products/adobeconnect.html)という製品があり、それなりにお金を払えばリッチなオンライン講義ができる。
しかし高価なのと環境が複雑なのが難点。
WebRTCを使ったオンライン講義のソリューションという案。
オフライン講義のメリットは、5感を使ってフルに訴えられること。ライブ感。身振りや声。
デメリットは、実際に講義場所へ移動しなければならないことと、まったく同じ講義を再現することができないこと。去年と同じ講義をそのまま同じようにことはできない、忘れてしまう。
そこで、ライブ講義の内容をすべて録画して、後から参加できるライブ参加システム。
途中から参加した人は、例えば倍速で流していって追いつくとか。
2つ目。
オンライン型の家庭教師。
今だとSkype型の家庭教師などで、専用のツールを使って書いたりして教えるが、これと同様のサービスをWebRTCで。
タブレットをホワイトボードにして書きながら、ライブに家庭教師。会話はWebRTCで。
3つ目。
集まらないグループワーク。
大学で教えてくるとき、グループワークは非常に盛り上がって楽しいが、これをオンラインでやれる環境がない。
4人ぐらいで集まってガリガリ書けるようなものがあるといい。
サーバを立てて保存できるようになっていて、後で「○月○日の分」のように見られるようにするのもよい。
ここからはピコもんとして持ってきたジャストアイデア。
キャラクター型のコミュニケーションツールで、アンケートやリコメンドを行うことができる。キャラクターはモジュール型になっている。
回答内容によってその後の動きを変えたりなど、何かを行っている途中でキャラクターの中にオペレータが入って、キャラクターに成り代わってライブにコミュニケーションを行える仕組み。
慶應義塾大学大学院・水口哲也さんのプレゼン
一番長い仕事はゲームデザイナー。
最近はゲーム関係はずいぶん減って、この2〜3年は人間の欲求とか本能から新しい物を組み上げるような試み、ソフトウェアやアプリをやっている。今回の登壇者の中ではWebRTCに詳しくない方だと思う。
WebRTCの未来、何が実現できるようになるのか。
これまでの経歴を紹介しながら、WebRTCを絡めるという観点で考えたい。
セガラリー(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BB%E3%82%AC%E3%83%A9%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%B3%E3%83%94%E3%82%AA%E3%83%B3%E3%82%B7%E3%83%83%E3%83%97)。
これにWebRTCがあったらどうか。
当然、リアルタイムで対戦したい。それから、隣の車の顔が見えたりとか。
Rez(https://sega.jp/ps2/rez/)。
これは演奏する気持ちよさとゲームの楽しさを融合したゲーム。
スペースチャンネル5(http://ch5.sega.jp/)。
ルミネス(http://lumines.jp/)。
これであれば、横に顔があってリアルタイムで見ながら対戦するとか。
Child Of Eden(http://www.ubisoft.co.jp/coe/)。
Kinnectを使ったゲーム。
相手がゴーストのように画面の向こう側へ映っていたらどうか。
あるいはくじらを浄化ししていくシーン、たとえば画面を挟んで協力してやったらどうか。
同じものを、画面を挟んで相手と遊ぶ、奏でる。
元気ロケッツ。
ソニーミュージックとやってプロデュースしているが、映像を見せながらライブする。
これにWebRTCを使うようになったらどうなるか。
体験型のライブ。
アプリ自体がチケットになっていて、ライブが買った瞬間、4週間前から始まっていたり。
あるいは遠隔地の人をライブの中で周りに表示したりとか。オンラインで(音楽の)セッションが繋がる。
ヤマハとやったボーカロイドの実験。
カメラがついていて、喋って歌詞を入れて、触りながら音楽を作っていく。
向こう側に人がいてコラボレーション。音楽におけるCo-creationはリアルタイム性が非常に重要。
瞬間性がWebRTCによって実現されると、人のスイッチが効きやすくなるのではと思っている。
続きのディスカッションはhttps://kisato.net/wp/html5/com-webrc_2です。
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